姑の影響で妊娠がなかなか

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世のなかには、実に理想的な姑も珍しくない。だが、私のクリニックを訪れる女性の義母というのは、どうかと思われるようなお人柄が少なくないように思えてならない。
A子さんの義母の場合を紹介してみよう。もちろん、正真正銘の実話である。
夫婦の寝室に、立派だが古風な鏡台がある。毎朝六時半になると義母がやってきて、おかまいなしに化粧をはじめる、これじゃ若夫婦もおちおち寝てられない。
前夜どんなに遅くても、A子さんは六時には起きざるを得なかった。
結婚して三カ月目、たまりかねて義母に言った。
「鏡台、おかあさんの部屋へお運びしますわ」
「いえ。ここでいいんだよ。私の鏡台は昔からここなんだから・・・」
ピシャリと断ったまま、いっさい移動に応じる気配をみせようとしない。夫にも申し入れたけれど、「しょうがないがナ。我慢しいや」と言うだけである。
それだけではない。この姑さん、家じゅうのふすまを夜も開けっ放しにさせるのだ。「家のなかで、隠しごとはいかんからね」と、いっさい閉めさせない。
そのくせ、A子さんはしばしば責められた。「お前さん、まだ子どもできんのかねえ。どこか悪いとこ、あるんじゃないの?」。
夫婦はたまりかねて週一回、しめし合わせてホテルへ行くことにした。そこでようやく水入らずのセックスに打ちこめた。
A子さんが私のとこへ相談にきたのは、結婚して満五年たったころだった。診察、検査してみると、排卵がひどく不順である。精神的に相当まいっていたから当然のことだろう。
これでは正常な妊娠などできるわけがない。
「なんとか先生の口から、お姑さんを説得してもらえませんか」
A子さんは思いつめた口調になった。
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別にたのまれなくても、それはこちらの”仕事”である。ある日、お姑さんにおいでを願った。
「おかあさん、孫ができるのを本当に待っておられるのなら、夫婦から離れたらいかがですか」
はじめに強い申し入れをして、じっくりと実情を聞いてみた。「ひとり息子を嫁に取られてしまう」、そんな気がして、なにかと言えば夫婦の間に割りこんでいたのだという。
母ひとり息子ひとりで育ってきた家庭に最近よくみられるケースである。
「お母さんのためにも早く孫を産もうと若い二人は一生懸命なんですよ。ほんとに幸せな家庭にしたいのなら、お姑さんのほうもお孫さんができるような雰囲気にしてあげなきゃ・・・」
そういうと、姑はポロッと涙を落とした。帰ってゆく後ろ姿が、ひどく寂しそうだった。

出典元:出会い アプリ